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ケリーの公式

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1万円を持ってある賭博に参加するとしよう。いくら賭けるかは自由で、勝てば賭け金が倍になり、負ければ丸ごと失われる。勝率が60%だとすると、最大の収益を得るには毎回いくら賭けるべきか。

愚かな者は一度で全額を賭けてしまうだろう。勝つ確率のほうが負ける確率より高いのだから。だが40%の確率で、一瞬にして無一文になる。

毎回、残った元手の一定の割合を賭けるとしよう。その割合はいくらが適切か。100回賭けて60回勝ち、40回負けるとすれば、割合を$x$として、利益は

$f(x)=10000*(1+x)^{60} *(1-x)^{40}$

この最大値を求めればよい。

一般に、1を投じるごとに追加の収益Wを得るか、元本Lを失うかするとし、勝率をp、敗率をqとすれば、期待収益は

$$f(x)=(1+Wx)^{p} (1-Lx)^{q} $$

最大値を求めるため、まず導関数を求める。

$$f^{’}(x)=Wp(1+Wx)^{p-1} (1-Lx)^{q} -L(1-p)(1+Wx)^{p} (1-Lx)^{q-1}=0$$

容易に次が得られる。

$$x=\frac {bp-q} {bL}$$

L=1、つまり負ければ元手がすべて失われるとき、この式をケリーの公式と呼ぶ。冒頭の問題ではp=0.6、q=0.4、b=1であり、x=20%と計算できる。つまり毎回、現在の元手の20%を投じるべきだ。勝率が0.9ならx=0.8。勝率が0.5ならx=0、五分五分の賭博には決して参加してはならない。勝率が0.5を下回るなら、なおさらである。

ケリーの公式は近似にすぎず、多くの仮定を置いている。何度も繰り返し博弈できること、資金が無限に分割できること、勝率が安定していること。投資の営みとは隔たりが大きい。それでも投資の大まかな見積もりの道具にはなる。ケリーの公式から見れば、一定の現金を残し、それを元手に立て直す備えをしておくことは十分に必要だ。投資において確率の計算は欠かせない。投資における勝率の見積もりそのものが、いわば玄学めいているとしても、グレアムが言ったように、定量計算が難しいからといって定量計算を放棄することはできない。